1.はじめに(受験参考書選びで大切なことは?)
ごきげんよう!椎名まつり(@417matsuri)です。今回の記事はこれまでになかった方向性として、受験参考書の選び方や使い方とオススメのルートについての紹介をしていきます。
今回は、その中で大学受験向けの英語長文の問題集や参考書を紹介していきます。英語長文の参考書・問題集については、全然納得の行かない参考書ランキングが世間に流布しており、参考書の選び方にまともなストラテジー(戦略)が見られません。まずは、こうした問題について少し切り込んでいこうと思います。本題の参考書の紹介については、3番目のセクションから始まりますので、興味のない方はお読み飛ばしください。
参考書のレビュー記事等を見ると、「この参考書はここが良い!」みたいなメリット・デメリットをアレコレ述べる記事が多いなと思うのですが、実際のところ、そのうちのほとんどは大学受験を目指す学生にとっては何の役にも立たない、ただの参考書オタク向けの意見です。そのような比較対照だけで参考書を選ぶことは大間違いで、受験参考書選びで最も大切なことは、難易度が適切で、習得するべきスキルを身につけることができる参考書を選ぶことに他なりません。
例えば、問題集のレビューを見ていると「全ての文で構文解説が丁寧にされているのが良い」みたいな内容がよく見られます。しかし、英語長文の問題集は全ての文の構文を完璧に把握するために扱うものではありません。英語長文の問題集は「正答を導く方法を学ぶ」ことや「問題を解く能力を高める」ために使うものですよね。
そこで、全文に構文の解説がついていないと理解できないような英語長文の問題集を使っていること自体、選ぶべき長文のレベルを見誤っているとしか言いようがありません。そのレベルでは、英文を読んで問題を解くなんて到底無理でしょう。
逆に言えば、適切なレベルの問題集を選んでいれば、全文に構文解説が付いている必要性はまったくなく、特に難しい部分がしっかりと説明してあればそれで問題ないはずです。そのため、「全ての文で構文解説が丁寧にされている」ことは良いことでもなんでもありません。そこが分からずに「この参考書のメリットは……」と述べているサイトが山ほどあることは残念ですね。
ということで、この記事では「習得するべきスキル」を中心にしてオススメの参考書を紹介していく点において、他のウェブサイト等とは大きく異なった切り口での参考書レビューとなっています。
ただ、オススメの参考書の紹介をする前に、この記事ではどのようなストラテジーをもって英語長文参考書を選んでいくのかという部分をより詳しく伝えていきます。
2.英語長文参考書・問題集の選び方
以上のような反省から、この記事では、 難易度が適切かつ習得するべきスキルを身につけることができる参考書を紹介していきます。それにあたり、英語長文の参考書や問題集を選ぶ際の基準をお伝えし、それぞれの内容について詳しく説明をしていきます。
1.習得するべきスキルにフォーカスする
2.適切な難易度の問題集を選択する
3.演習量を重視して同レベル帯で複数選択する
2番目の難易度と3番目の演習量というポイントはわかりやすいですが、「習得するべきスキル」というのが分かりにくいかなと思います。しかし、前述の通り私はこのポイントが一番重要だと考えています。
そのため、まずは改めて「習得するべきスキルにフォーカスする」という内容を詳しく解説していきます。
英語長文の問題のスキルを習得するということは、英語長文で問われる問題形式に対応していくことであると言い換えることが出来ます。そして、基本的な問題形式は、語彙や文法、英作文に関係する問題を除けば「内容一致問題」「空所補充・パラフレーズ問題」「内容説明問題」に大別されます。つまり、これらの問題を解く能力を身につけていくことのできる参考書をチョイスすることが重要だということですね。
しかし、出題される問題形式は志望する大学によって異なってきます。そのため、志望校によっては対策をする必要のない問題形式があるということのにも注意しましょう。また、英検やTOEFL等を始めとする英語の検定試験を目標とする場合も対策するべき問題形式は異なってきます。この記事では、以下の図のように大まかな区分を行っています。
◯は出題があるもの、△はまれに問われるもの、×は問われないものになっています。なお、一部この表に当てはまらない大学や学部、受験方式もあるので、問題形式の方を参考に必要な参考書を選別してください。
そして、このスキルの習得順序についても慎重に考える必要があります。やはり、上の表で見て分かる通り、あらゆる英語の試験で問われる内容一致問題のスキルは最優先で高める必要があります。その一方で、空所補充やパラフレーズ問題は私立大学の一般入試以外では部分的にしか問われないため、優先順位としては少し落ちます。また、内容説明問題も国公立大学の二次試験で中心となって出題される形式のため、優先順位が下がります。
難易度という面でも、内容一致問題と空所補充・パラフレーズ問題に比べると、内容説明問題は長文全体の構造を理解するスキルや、英文和訳のスキルが求められる分難しくなる傾向にあります。そのため、内容一致問題や空所補充・パラフレーズ問題がある程度解けるようになってから、内容説明問題には取り組むんでいくことにします。
第2のポイントである難易度については言わずもがなですが、基本的には共通テストレベルが出来るようになってから、私立大学の一般入試や国公立大学の二次試験のレベルを目指していくと考えておけば問題ありません。易しい問題から徐々にレベルを上げていくようにルートを組み立てていきましょう。
最後のポイントは演習量の重視です。英語長文問題を解くためのスキルを身につけるために、解くべき問題数は、多くの学生が考えているよりも圧倒的に多いということを意識しましょう。皆さんは数学の公式を覚えるために教科書とチャートを何周しましたか?メネラウスの定理が使えるようになるまでどれだけ簡単な問題で演習を繰り返しましたか?おそらく5回、10回と繰り返していく中で覚えていったのではないでしょうか。
当然、英語でも問題の解法を導くためのスキルを身につけるためには相当の努力が必要です。それにも関わらず、英語の参考書を勧めるウェブサイトを見ると、「長文はやっておきたい300→500をやればMARCHレベルは余裕です」みたいなとんでもないことが書いてあるわけです。たった2冊、たった50題の長文を読んで何が身につくのでしょうか。繰り返し解いたとしても全く足りないと断言せざるを得ません。
ということで、ルート上ではほとんど同じレベルの問題集を多数紹介しています。これは、そのうち気に入ったものを選ぶという意味ではなく、基本的にはそのレベルの問題集を複数解き、同じレベルの初見問題が出てもちゃんと高得点が取れるようになるまで演習することが求められます。
以上、3つのポイントを詳しく説明していきました。「速読力の強化」や「長文の構造の把握」といった事項については、スキルとして学んでいくのではなく、数多くの英語長文に触れていく中で、自然と身に着けていくことを目標としています。そのためにも、たくさんの英語長文を読み、英語力を高めていきましょう。
3.英語長文参考書・問題集のおすすめルート
ここからは、これまでで紹介した参考書の選び方に従い、どの段階(学年・偏差値等のレベル、志望校)でどのような英語長文問題のスキルを伸ばしていくべきかについて考えながら、参考書や問題集に取り組んでいく順序を決めていった私なりの参考書ルートを提示したいと思います。もちろん、読者の皆さんも上の基準を参考にしつつ、自分なりにルート内の参考書をを取捨選択して改変してもらえればと思います。
多くの参考書を紹介する関係上、ダラダラと書き連ねると分かりにくいので、以下の5つの難易度に分割して紹介していきます。
レベル1:共通テストよりも易しい長文問題(高1向け)
レベル2:共通テストレベルの長文問題(高1~高2向け)
レベル3:中堅私立大学(日東駒専・大東亜帝国)レベルの長文問題(高2向け)
レベル4:中堅国公立大学、難関私立大学(関関同立・GMARCH)レベルの長文問題(高2~高3向け)
レベル5:難関国公立大学・最難関私立大学レベルの長文問題(高3向け)
ただし、それぞれの難易度の中で目標とする問題形式が異なる場合があるので、そこは記事の中で1つずつ補足をしていきます。また、この問題集は特定の試験に合格するという目的ではなく、英語長文リーディングの能力を全体的に高めることを目的としています。共通テストや英検など、個々の試験に対応するためには、その試験に特化した問題集を追加で解く必要があるので注意してください。
1.レベル1の問題集の紹介(共通テスト以前の段階・高1向け)
まずこのレベルでは本格的な受験対策を始めた高校1年生が取り組むべき英語長文の問題集をいくつか示していきます。以下の2冊は共通テストよりもかなり易しいレベルになっています。高校受験レベルから一段上の段階を目指すのに良いでしょう。レベル1の問題集では問題形式はほとんどが内容一致問題になっているので、まずはこの形式から正答を導く能力を高めていきましょう。
なお、『基礎速読英文』は『レベル別問題集標準編』だけでは演習量が足りない(=正答率が上がらない)場合に補充で使用しましょう。これ以降も2~3冊をまとめて紹介している場合、同程度のレベルの問題集になるので、1冊目が問題なく解けるようなら、次のグループの問題集に進んで構いません。
次の段階もまだ共通テスト本番に比べると難易度の低い問題集になります。しかし、高校1年生・2年生のレベルではまだまだ読めないよ、という人もいると思いますので、どんどん問題演習を重ねていきましょう。
このレベルの問題が問題なく解けるようになったら、レベル2に進みましょう!
2.レベル2の問題集の紹介(共通テストレベル・高1~2向け)
ここからは共通テストレベルの段階の問題集になります。このレベルは高1・高2生を対象に作っていますが、共通テスト自体の対策は高3になっても続きます。この記事では、個々の試験への対応ではなく、英語長文を読むスキル全体の向上を目的とした参考書の紹介を行うため、共通テストそのものへの対策参考書については以下の記事を参考にしてください。
さて、このレベルも基本的には内容一致問題の演習をメインに考えます。もちろん、たまに違う形式が出てしまうのですが、主な目標は内容一致問題に置いて演習をしましょう。『全レベル問題集 共通テストレベル』は上のレベルとあまり変わらないかもしれませんが、まずはここから始めたいところです。
そして新しい問題集から2冊を推薦します。まず、最新刊の『The Rules 1』は共通テストを意識した形式の出題もあり、バラエティに富んだ出題です。また、『ソリューション1』は内容一致問題中心で、癖がなく使いやすいためオススメです。
ここで紹介している問題は短めの英文が多く、実際の共通テストの後半の問題はこれらの問題集よりもかなり長い英文が出題されています。これらの問題集の問題が十分解けるようになったら、別途共通テスト用の問題集を使って対策をしていきましょう。
上の問題集のレベルで問題が解けるとなったら、少しレベルを上げ、以下の2冊に取り組みましょう。このあたりのレベルでは私立大学の一般入試を意識した問題が多くなりますが、国公立大学の二次試験を目指す皆さんも、この程度のレベルは確実にクリアしていきましょう。
3.レベル3の問題集の紹介(中堅私大レベル・高2向け)
このレベルからは私立大学では中堅どころのレベルの問題集を紹介していきます。また、国公立大学を目指す生徒の皆さんは、内容説明問題の練習を始めていく段階になります。そのため、ここから先は記述式問題の演習が必要かどうかで、扱う問題集を変えていく必要があります。
私立大学向け
私立大学入試だけを考えているなら、以下の問題集からスタートしましょう。特に『システム英語長文』シリーズは癖がないので、オススメしやすい問題集になっています。迷ったらまずはこれから始めましょう。このレベルからは、私立大学系統の問題だけで構成された問題集が少なくなってきます。演習量が不足すると感じる場合は、次に紹介する『出題パターン演習』も取り組むことをオススメします。
なお、『日東駒専&産近甲龍の英語』は長文以外も入っていますが、このレベルの大学を受験する予定なら過去問演習の前に解いてみるのがよいでしょう。もっと上位の大学だけを目指しているなら、わざわざ買わなくても良いかな、と思います。
国公立大学向け
続けて、国公立大学受験を考えている方に向けた問題集を紹介します。ただ、まだまだ記述式問題である内容説明問題の割合はそこまで高くないものが多いですね。
『出題パターン演習』は多様な問題形式が揃っており、欠点の少ない問題集です。内容説明問題の採点基準もしっかりついているので、自分の解き方が合っているかを理解しやすくなっています。『The Rules』は1に続き、バラエティのある内容で演習することができます。
また、私大向けで紹介している『システム英語長文』もオススメできる内容になっています。
補助教材
以下の2冊は問題演習が不足している場合に追加で扱う教材です。オススメ度は下がりますが、安くたくさん読みたいなら以下の2冊の問題集をやりましょう。
『毎年出る』は超のつくロングセラー問題集で、英文自体は良いのですが、問題形式や内容が古く、時代に合っているとは言えません。全体を見ると内容一致問題や空所補充問題、内容説明問題がバランス良く入っています。
また、『やっておきたい300』は内容説明問題を中心とした問題集で、英文の難易度自体はこのレベルより1段階下なのですが、内容説明問題を解くのが難しいのでここに配置しています。
4.レベル4の問題集の紹介(中堅国公立&難関私立レベル・高2~3向け)
ここからはさらに難易度を上げて、国公立大学なら中堅レベル、私立大学ならGMARCHや関関同立といった難関レベルの問題集になっていきます。このレベルでも、問題の系統を中心にいくつかの問題集を分けて紹介していきます。
私立大学向け
とは言ったものの、このレベル帯で私立大学の入試問題を多く収録したものは非常に少ないです。近刊で唯一といっていいほど信頼できる『システム英語長文』をまずは解いてほしいところですが、問題演習の量としては少ないので、比較的私立大学の問題が多く収録されている『ハイパートレーニング』を追加でやると良いかなと思います。私大専願でないなら1つ前のレベルの『出題パターン演習2』や、下の補助教材で扱う『イチから鍛える英語長文500』を扱うのも良いと思います。
『速読のプラチカ』は演習量を増やすための選択肢ですが、正直かなり古いのと解説が薄いのでイマイチオススメしにくいですね……。『GMARCH&関関同立の英語』はこの辺の私学をまとめて受験することを考えているならまず買って損はないです。このレベルの大学を第一志望にしている場合は、この本から『〇〇大の英語』シリーズ、過去問演習と繋いでいきましょう。
国公立大学向け
国公立大学向けのルートでは、国公立大学受験生なら誰しもが通る道である『やっておきたい英語長文500』が満を持しての登場です。問題点を挙げるとすれば、さすがに問題が古くなってきたことですね……。
そして、『やっておきたい』に代わる国公立大学受験生向けの必携問題集として推したいのがやはり『システム英語長文』シリーズです。上で紹介している『システム英語長文2』をやってから、『やっておきたい500』を経由して『3』をやると問題演習量としても十分かと思います。中堅国公立大学を目指す場合は、このあたりから過去問演習に移りましょう。
『1日30分の英語長文15』も『やっておきたい500』の仲間として長く愛されてきた問題集です。こちらも問題が古いのですが、演習量を稼ぐためには良い材料になるかと思います。
補助教材
様々な系統の問題を比較的新しい問題集で解きたいなら『イチから鍛える英語長文500』をオススメしますが、国公立大学を受験するなら、上述の問題集たちを優先してやった方が良いでしょう。しかも、この問題集はかなり難易度のばらつきがあるという、大きな難点を抱えています……。
5.レベル5の問題集(最難関私立大学・難関国公立大学レベル・高3向け)
ここからは早慶上智といった最難関レベルの私立大学や、旧帝大などの難関国公立大学のレベルを目指す学生向けの問題集を紹介していきます。なお、これらの問題集で実力を付けた後には、受験する大学の過去問演習に移り、さらに能力を伸ばす必要があることは言うまでもありません。
私立大学向け
このレベルも、私立大対策と国公立大学大対策で別の参考書を紹介していきます。まずは私立大学の対策ですが、このレベルではまず『全レベル問題集5』をオススメします。私大最難関レベルとありますが、早慶上智の易しい学部くらいを想定した難易度になっています。そして、この上を行くのが『キムタツリーディング』ですね。これももう古いのですが、これに代わる参考書もなかなか出てこないのが現状です……。需要がないのかなぁ……。
『SPEED攻略10日間』は10題のみですが、難関私大の問題を追加で演習したい際にオススメ。あとは『〇〇大学への英語』シリーズや過去問演習で実力を付けていくのが良いと思います。
国公立大学向け
こちらは国公立大学を目指す生徒向けの問題集になっています。このレベル帯は比較的問題集が充実しているのですが、こちらも全体的に古いです……。そのなかで新しい参考書として『システム英語長文4』を紹介しておきます。これは近年の入試英語長文の長文化傾向にも合っており、非常に実践的な問題集になっているので、ファーストチョイスとしました。
次の3つはほとんど難易度は変わらないですが、『出る出た上級編』は内容一致問題がやや多めで、『やっておきたい700』と『1日40分の英語長文』は記述式の内容説明問題が中心です。
日栄社の『英語長文 高校上級用』は演習量が足りない人にオススメです。位置づけ的には補助教材ですね。特に演習量が不足していないなら扱う必要はありません。
最後に紹介している『Rise最難関編』までやる必要はないと思いますが、超難関の国公立大学入試で英語を武器にすることを考えているなら、これが良いと思います。
ここまで、かなり多くの英語長文の問題集を紹介してきました。繰り返しにはなりますが、最後に参考書を選択するポイントを簡単に確認しておきます。まずは、必ず自分の受験大学や方式、現在の実力に合った参考書を選択しましょう。そして、問題がある程度簡単に解けるようになるまでは、似たレベルの問題を解いて量をこなすことを重視しましょう。そうすれば、徐々に英語の実力は伸びていくはずです。
4.おわりに
今回の記事では、英語長文の参考書の選び方とオススメの問題集によるルートの紹介を行っていきました。かなり長い記事になりましたが、大学受験を志す多くの方にとって参考となる記事になったと思います。随時ルートの更新はしていこうと思いますので、定期的にチェックしてもらえれば幸いです。
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